20.1.1 一般事項
(1) 適用範囲
この節は、断熱・防露工事に適用する。
また、1章[各章共通事項]と併せて適用する。
(2) 基本要求品質
(ア) 断熱・防露工事に用いる材料は、所定のものであること。
(イ) 断熱・防露工事の仕上り面は、所要の状態であること。
(ウ) 断熱・防露工事は、断熱性に影響を与える厚さの不ぞろい、欠け等の欠陥がないこと。
20.1.2 材料
(1) 断熱材
(ア) 断熱材の種類は、表20.1.1により種類、厚さ、密度等は、特記による。
ただし、ホルムアルデヒド放散量は、JIS等の材料規格において放散量が規定されている場合は、特記がなければ、F☆☆☆☆とする。
(イ) (ア)以外の断熱材を用いる場合は、特記による。
(2) 防湿材
防湿材の材料は、次のいずれかに該当するもの又はこれらと同等以上の透湿抵抗を有するものとし、種類及び厚さは、特記による。
(a) JIS A 6930 (住宅用プラスチック系防湿フィルム) に基づくもの。
(b) JIS Z 1702 (包装用ポリエチレンフィルム) に基づくもので、厚さ0.05mm以上のもの。
(c) JIS K 6781 (農業用ポリエチレンフィルム) に基づくもので、厚さ0.05mm以上のもの。
(3) 気密材
気密材の種類は、次のいずれかに該当するもの又はこれらと同等以上の気密性を有するものとし、種類、厚さ等は、特記による。
(a) JIS A 6930に基づくもの。
(b) JIS A 6111 (透湿防水シート) に基づくもの。
(c) 「日本農林規格」に基づく、合板及び構造用パネル並びにJIS A 6901 (せっこうボード) に基づくもの。
(d) JIS A 9521 及び JIS A 9526 に基づくもの。
(e) 乾燥木材 (含水率20%以下) 等
(f) 金属部材
(g) コンクリート部材
(4) 防風材
防風層の材料は、次により、適用は特記による。
特記がなければ、JIS A 6111 に基づく透湿防水シートBとする。
(a) JIS A 6111に基づく透湿防水シート
(b) 「日本農林規格」に基づく合板及び構造用パネル
(c) JIS A 5905 (繊維板) に基づくシージングボード
(d) JIS A 5440 (火山性ガラス質複層板 (VSボード) )
(e) JIS A 5905 に基づくMDF
(5) 気密補助材
防湿材及び気密材の継目部分等に使用する気密補助材は、次により、防湿材及び気密材の製造所の指定するものとする。
なお、気密テープ及びシーリング材は、可塑剤により防湿材等に影響のないものとする。
(a) JIS A 6930 の気密性能と同程度の性能を有する気密テープ
① ブチル系テープ、アスファルト系テープ等は、気密性又は水密性のあるものとし、経年によって粘着性を失わないものとする。
② ビーズ法ポリスチレンフォーム及び押出法ポリスチレンフォームに使用する気密テープは、断熱材製造所の指定する製品とする。
③ 透湿防水シートに使用する気密テープは、11.4.2[材料](2)による防水テープとする。
(b) 気密パッキン材
気密性のあるものとし、経年によって弾力性を失わないものとする。
(c) 現場発泡断熱材
高い気密性を有するものとする。
(d) シーリング材
経年によって弾性と付着力を失わないものとする。
20.1.3 施工部位
断熱工事の施工部位及び外気等に接する開口部を断熱構造とする部位は、特記による。
20.1.4 断熱材、防湿層の施工
(1) 断熱材の保管・取扱いは、次による。
(ア) 断熱材
(a) 共通事項
① 材料の保管は、日射、雨、温度、湿度等の影響による変質を受けないように、適切な養生を行う。
② 断熱材の上に重量物を載せてはならない。
(b) 発泡プラスチック断熱材
① 火気に十分注意する。
② 軟質塩化ビニル被覆電線とは、接触させない。
(イ) 現場発泡断熱材
施工は、断熱材製造所の仕様による。
なお、火気、有害ガス等に対する安全衛生対策は、関係法令等に基づき、十分に行う。
(2) 断熱材の加工は、次による。
(ア) 切断等の材料の加工は、清掃した平たんな面上で、定規等を用い正確に行う。
(イ) ロールになったフェルト状断熱材は、はめ込む木枠の内法寸法より5~10mm大きく切断する。
(ウ) ボード状断熱材の加工
(a) 充填断熱工法の場合は、専用工具を用いて内法寸法に合わせて正確に切断する。
(b) 外張断熱工法の場合は、専用工具を用いて柱芯に合わせて切断する。
(エ) 加工の際、断熱材に損傷を与えないようにする。
(3) 断熱材の取付け等は、次による。
(ア) 充填断熱工法
(a) 断熱材は、周囲の木枠との間及び室内側下地材との間に、隙間が生じないように均一にはめ込み、釘留め等とする。
また、天井断熱の場合は、天井の上に敷き込むことにより取り付ける。
(b) 耳付きの防湿層を備えたフェルト状断熱材を用いる場合は、防湿層を室内側に向け、耳を木枠、柱又は間柱の見付け面に30mm以上重ね、間隔200mm程度でステープル留めとする。
なお、防湿フィルムの端部は、面材又は気密材製造所の指定する気密テープで押さえる。
(c) ボード状断熱材を充填する場合において、隙間が生じた時は、現場発泡断熱材等で適切に補修する。
(d) 上記以外の取付けを行う場合は、特記による。
(イ) 外張断熱工法
(a) ボード状の発泡プラスチック断熱材を柱、間柱、垂木、野地板等の外側に張り付ける(外張りする) 場合は、断熱材の突付け部を、柱等の下地がある部分に合わせ、隙間が生じないように釘で仮止めしたのち、通気胴縁で断熱材を介して柱又は間柱に釘留めする。
なお、ボード状の発泡プラスチック断熱材で気密層を構成する場合は、ボードの継目を、気密補助材を用いて隙間が生じないように施工する。
(b) 通気胴縁の留付け釘は、断熱材製造所の指定する外張り断熱専用ビスとする。
(c) 留付け後、直ちに外装材を設置する。
(d) 上記以外の取付けを行う場合は、特記による。
(e) 蟻害の顕著な地域において、外張断熱材に防蟻処理を施す場合の処理の種類は特記による。
(ウ) 丸太組構法工事の建具回りは、8.9.9[建具回り](2)による。
(4) 防湿層の施工は、次による。
(ア) 断熱材の結露防止のため、室内側に防湿材を施工する。
なお、防湿層を省略する場合は、特記による。
(イ) 防湿フィルムは、幅広の長尺フィルムとし、これを連続させ、隙間のできないように施工する。
継目は下地材のある部分で 30mm 以上重ね、間隔 200mm 程度でステープル留めとし、その部分を合板、せっこうボード、乾燥した木材等で挟み付けて、たるみ及びしわのないように張る。
また、せっこうボード等で挟みつけることができない部分又は下地のある部分で重ねることができない部分は、防湿層の継目に気密補助材を用いて、隙間なく留め付ける。
なお、防湿フィルムの端部は、下地材のある部分で木材等により挟み付け、釘留め又は気密テープで留め付ける。
(ウ) 耳付きの防湿層を備えたフェルト状断熱材を用いる場合は、(3)(ア)(b)による。
なお、防湿材の継目は、隙間が生じないように十分突き付けて施工する。
隙間が生じた場合は20.1.2(3)の防湿材、気密テープ等で補修する。
(エ) ボード状の発泡プラスチック断熱材、合板等を気密層として重ねて用いる場合の相互の継目その他の防湿材との継目には、気密補助材を用いて、長期的な隙間が生じないように施工する。
(オ) 防湿材は、電気配線、設備配管等により破らないように施工する。
(カ) 施工後、防湿材が破れた場合は、気密テープ等で補修する。
(キ) 壁、床、天井又は屋根の取合い部等の気密措置のための防湿フィルムは、屋根又は天井と壁、壁と床の取合い部、壁の隅角部で、これを構成する各部位が外気等に接する部分においては、下地材のある部分で30mm以上重ね合わせる。
また、留付けはステープルを用いて、継目部分は200~300mm程度の間隔に留め付ける。
なお、各部位ごとの気密措置は、20.1.5(カ)による。
(ク) 構造材が防湿フィルムを貫通する部分は、フィルムと構造材を気密テープ等で留め付ける。
(ケ) 開口部等の回りの施工は、次による。
(a) 開口部回りは、建具枠取り付け部で結露が生じないように、構造材や防湿フィルムと建具枠のすき間を気密補助材で処理する。
(b) 床下及び小屋裏等の点検口回りは、防湿フィルムを点検口の枠材に、気密テープ等により留め付ける。
(c) 断熱構造とする部分に用いる床下及び小屋裏点検口は、気密性の高い構造とし、特記による。
(コ) 設備配管回りの施工は、次による。
(a) 設備配管又は配線により外壁、天井又は床の防湿フィルムが切れる部分は、貫通する外壁、天井又は床のそれぞれの防湿フィルムを切り開き、切り開いた部分を留め代として、設備配管又は配線に気密テープで留め付けるなど、気密層が連続するように処理する。
(b) 電気配線のコンセント及びスイッチボックスの回りの施工は、次のいずれかとし、適用は特記による。
また、壁、天井又は床のそれぞれの防湿フィルムと気密テープで留め付ける。
① 気密措置が講じられた専用のボックスを使用する。
② コンセント及びスイッチボックスの回りを防湿フィルムでくるむ。
20.1.5 各部位の工法
各部位の工法は、特記による。
特記がなければ、次による。
(ア) 床の施工
(a) 断熱材の施工に当たっては、施工後、有害なたるみ、ずれ及び屋内仕上材との間に隙間等生じないように、原則として、受材を設ける。
(b) 床に防湿フィルムを張らない場合は、次により、適用は特記による。
① 床下地板に構造用合板、構造用パネル、パーティクルボード等の床合板等を用いる。
② 床合板等は、下地のある部分で継ぐか又はさね付きとし、それ以外の場合は、気密テープで床合板の継目の処理を行う。
(イ) 壁の施工
(a) 断熱材の施工に当たっては、長時間経過してもずり落ちないように留め付ける。
(b) 断熱材は、原則として、土台から桁又は桁から桁まで隙間なくはめ込む。
(c) 断熱材は、筋かいや配管部分で隙間ができないように取り付ける。
(d) 真壁の柱部分及び中間階床の横架材に含水率20%以下の乾燥木材を使用した場合には、その部分に防湿フィルムを施工しないことができる。
(e) 配管部は、管の防露措置を行うとともに、断熱材は配管の室外側に施工する。
(ウ) 天井の施工
(a) 天井の断熱材は、天井と外壁との取合い部、間仕切壁との交差部、吊木周囲又は天井根太の部分で、隙間が生じないように注意する。
(b) 天井断熱とする場合、断熱材は野縁と野縁間又は野縁をまたいで天井全面に敷き込む。
あるいは天井根太間にはめ込む。
(c) 天井断熱とする場合、防湿材を野縁の下に施工する。
(d) 埋込照明器具 (ダウンライト) (JIL 5002 (埋込み形照明器具) のSB形埋込み型照明器具を除く。) の上部には、過熱による発火防止のため断熱材を覆わないものとする。
ただし、これにより難い場合は、監督職員と協議する。
(e) 天井断熱とする場合、断熱材により小屋裏換気経路が塞がれないように施工する。
(f) 天井断熱の場合で天井点検口を設ける時は、気密性及び断熱性の高い構造とし、適用は特記による。
(エ) 屋根の施工
屋根断熱の場合は、次による。
① 断熱材を屋根の垂木間に施工する場合は、施工後、有害なたるみ、ずれ、隙間等生じないように、原則として、受材を設ける。
② 断熱材を屋根の垂木の屋外側に取り付ける場合は、屋根と外壁の取合い部で断熱材の隙間が生じないように両面粘着テープで仮止めし、通気胴縁で断熱材を介して釘等で留め付ける。
③ 断熱材の外側には通気層を設ける。
断熱材として繊維系断熱材を使用する場合には、断熱材と通気層の間に防風層を隙間なく設ける。
防風層を透湿防水シートBとする場合の継目は、100mm 以上重ねて、下地材に留め付ける。
また、配線・配管の貫通部は、11.4.2[材料](2)による片面粘着防水テープ等で補修する。
(オ) 気流止めの施工
気流止めの施工部位は次により、気密材の材料及び工法は、特記による。
① 屋根又は天井と壁及び壁と床との取合い部においては、外気の壁内流入の防止を要する部位
② 間仕切り壁と天井又は床との取合い部で、間仕切り壁の内部の空間が天井裏又は床裏に対し開放されている部位
(カ) 気密措置
断熱材の取付け工法に対応し、次に掲げる部位では、断熱材及び防湿材に隙間が生じないように気密措置を行う。
工法は、特記による。
① 外壁と天井及び屋根との取合い部
② 外壁と床との取合い部
③ 間仕切壁と天井又は床との取合い部
④ 下屋の小屋裏の天井と壁との取合い部
⑤ 外壁と基礎との取合い部
(キ) 床下防湿
床下防湿は、4.2.2[地盤に接する鉄筋コンクリートによる床下の防蟻処理](ア)及び(イ)による。
(ク) 床下換気
床下換気措置は、4.2.4[防腐措置](2)による。
(ケ) 小屋裏換気
小屋裏換気措置は、4.2.4(3)による。
(コ) 養生
(a) 断熱工事終了後、後続の工事によって断熱材及び防湿材が損傷を受けないように、必要に応じて養生を行う。
(b) 施工中、屋外に面する断熱材は、雨水によるぬれ又は直射日光による劣化等により損傷を受けないように、必要に応じてシート類で養生を行う。
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